のぎく (野菊) 


ノコンギク  2016/08/25 長野県霧ヶ峰  
 野菊は、家菊(いえぎく)の対語。家菊が、栽培品であるキクを指すのに対して、野辺に野生する菊の仲間を通称する。

 主な野菊の仲間を一覧する。
白色から薄紫色の野菊
和名 漢名 学名 日本における分布域など
〔ほぼ全国に産〕      
リュウノウギク    Chrysanthemum makinoi 本州(宮城新潟以南)・四国・宮崎に分布
ノコンギク 三褶脈紫菀 Aster microcephalus  var. ovatus 北海道・本州・四国・九州に分布。
園芸品はコンギク
シロヨメナ 光葉三脈紫菀 Aster leiophyllus var. leiophyllus 北海道・本州・四国・九州に分布。
シラヤマギク 東風菜 Aster scaber 北海道・本州・四国・九州に分布。若菜を食い、婿菜と言う。
〔主に西日本産〕      
ヨメナ 鋭齒馬蘭 Aster yomena var. yomena 狭義の野菊。本州中部以西(特に関西)に分布。若菜を食う。
ミヤマヨメナ 忘都草  Aster savatieri 本州(箱根以南)・四国・九州に分布。花期は5-6月。
園芸品はミヤコワスレ
オオユウガギク   Aster yomena var. angustifolius 本州(愛知県以西)・四国・九州に分布。
コヨメナ 馬蘭 Aster indicus 四国・九州に分布。花期は、南方では一年中。
〔主に東日本産〕      
ゴマナ    Aster glehnii 本州・北海道に分布。
ユウガギク 柚香菊 Aster iinumae 本州(近畿以北)に分布。
カントウヨメナ   Aster yomena var. dentatus 本州(関東・東北)に分布。
カワラノギク    Aster kantoensis  本州(関東・静岡県東部)に分布。

黄色の野菊
和名 漢名 学名 日本における分布域など
アワコガネギク
(キクタニギク)
甘野菊 Chrysanthemum seticuspe f. borelae 本州(岩手~近畿)・壱岐・対馬に分布。
 
 漢名を野菊(ヤキク,yĕjú)というものは、次のようなものである。いずれも、花は黄色

  シマカンギク(ハマカンギク・アブラギク) Chrysanthemum indicum
         (野菊・野黃菊・苦薏)
  ホソバアブラギク Chrysanthemum lavandulaefolium
         (細裂野菊・岩香菊・野菊・甘菊・甘野菊)
『中国本草図録』Ⅰ/0379・Ⅴ/2360
  アワコガネギク(キクタニギク・アブラギク) Chrysanthemum seticuspe f. borelae
         (甘野菊・北野菊)
『中国雑草原色図鑑』245
  
 栽培されている菊については、キク Dendranthema grandiflorum を見よ。
 キク科 Asteraceae(菊 jú 科)の植物については、キク科を見よ。  
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』11 に、「野菊 アブラギク センボンギク イハヤギク」と。
 

   なでしこの暑さわするゝ野菊かな 
(芭蕉,1644-1694)

   なつかしきしをにがもとの野菊哉 
(蕪村,1716-1783。しをにはシオン)
 
 道の眞中は乾いてゐるが、兩側の田についてゐる所は、露にしとしとに濡れて、いろいろの草が花を開いてる。タウコギは末枯れて、水蕎麥蓼など一番多く繁つてゐる。都草も黃色く花が見える。野菊がよろよろと咲いてゐる。民さんこれ野菊がと僕は吾知らず足を留めたけれど、民子は聞えないのかさつさと先へゆく。僕は一寸脇へ物を置いて、野菊の花を一握り採つた。
 ・・・
 「・・・まァ綺麗な野菊、政夫さん私に半分おくれッたら、私ほんとうに野菊が好き。
 「僕はもとから野菊がだい好き。民さんも野菊が好き・・・・・・・・・・・
 「私なんでも野菊の生れ返りよ。野菊の花を見ると身振ひの出るほど好もしいの。どうしてこんなかと、自分でも思ふ位、
 「民さんはそんなに野菊が好き・・・・・・道理でどうやら民さんは野菊のやうな人だ。
 民子は分けてやつた半分の野菊を顏に押しあてヽ嬉しがつた。二人は歩きだす。
 「政夫さん・・・・・・私野菊の樣だつてどうしてですか。
 「さァどうしていふことはないけど、民さんは何がなし野菊の樣な風だからさ。
 「それで政夫さんは野菊が好きだつて・・・・・・・・・・・
 「僕大好きさ。
 民子はこれからはあなたが先になってと云ひながら、自らは後になった。・・・
                    
(伊藤左千夫『野菊の墓』1906)

    小説の舞台は、「矢切の渡を東へ渡り、小高い岡の上」、今日の千葉県松戸市下矢切界隈。
    時は、陰暦の九月十三日の、「露霜が降りたと思ふほどつめたい」朝。
    一握り採った「よろよろと咲いてゐる」野菊というのは、カントウヨメナか、或はユウガギクだろうか。
    なお、文中、水蕎麥はミゾソバ、都草はミヤコグサ
    蓼は種々ありえるが、サクラタデボントクタデなどか。
    タウコギは、本譜にはまだ写真が無い。
   
 文部省唱歌「野菊」(1942,石森延男作詞) 

   遠い山から 吹いて来る
   小寒い風に ゆれながら
   けだかくきよく 匂う花
   きれいな野菊 うすむらさきよ
   ・・・

     
(詠み込まれているのは薄紫色の花をさかせる野菊、
     
 ヨメナカントウヨメナノコンギクあたりか)

ユウガギク   2008/10/09 荒川河畔田島が原

跡見群芳譜 Top ↑Page Top
Copyright (C) 2006- SHIMADA Hidemasa.  All Rights reserved.
クサコアカソウ シュロソウ スハマソウ イワチドリ チダケサシ 跡見群芳譜トップ 野草譜index